私が会社を辞めて農業を始めた理由

こちらの記事まで読んでいただきありがとうございます。少し長いですがお付き合いいただけると嬉しいです。

私が会社を辞めようと思った理由は2つ。
それは「将来に対する不安」と「家族との時間」だった。

①将来に対する漠然とした不安

私は大学卒業後銀行で約11年働いていた。外回りの営業で、法人企業への貸出し業務が主な仕事。融資の金額や新しい取引先をどれくらい増やしたかなど、ノルマは辛かったがそれなりにやりがいもあり、特段仕事や人間関係に不満があった訳ではなかった。

転機となったのは32歳を過ぎた頃。

ふと、「あーもうなんだかんだで10年働いたんだなー」と思ってゾッとした。


「10年働いたけど、、俺って空っぽだな。。。」


長年営業をやってきたことで、人より多少コミュニケーション能力があるくらいで、特段仕事が早いわけでも、目立ったPCスキルや資格があるわけでもなし。

その頃はよく自分の市場価値がどうこうみたいな転職サイトのCMが流れていたのを覚えている。

「俺は10年間働いて、いったい何が身についたんだろう」

今の自分が会社の外に出たとしても何も出来ないと思い、焦りを感じた。

そして私には以前から将来に対する漠然とした不安があった。

これから先の10年、20年というのは、今までの10年、20年とは比べ物にならない、想像すら出来ないほどのスピードで世の中が変わっていく。

色々なものがAIに取って代わられ、新たな産業は生まれるが、それ以上に全体の人手はどんどんいらなくなる。

一方で、老後も働き続けなければ生活を維持していくのが難しい。

年金は当てにできないし、退職金は住宅ローンの返済に消え、子どもの教育資金、老後の生活費などいくらでもお金はかかる。ほんの一握りの富裕層を除けば定年過ぎて悠々自適な暮らしなどまず夢の話だ。

私自身でこれを考えたとき、あと10年、ギリギリ20年は前の会社でも働ける居場所はあったと思う。ただその先を考えると、人手がいらなくなってくる時代、50歳を過ぎた自分が優秀な20代・30代と肩を並べて働き続けられる自信がなかった。

今でさえ40代で早期退職の対象となる時代。自分の身に明日突然何が起こってもおかしくはない。

そして、いざ退職の声がかかったときに

「これまで家族を養うために嫌なことにも必死に耐え、家族との時間を犠牲にしてでも会社に貢いできた。なんで自分なんだ」

と悔やんでも、すでに遅い。こうも考えられるだろう。

「そうならないために、今の会社で自分が活躍出来るポジションを見つけ出すために頑張ればいいではないか。」

勿論その考えは正しいと思う。ただこの先の未来がどうなるかは分からない。
どんな一流企業であれ業績が悪化すれば人員削減は生じる。年齢が上がるほど、自分が対象になる可能性も上がり、そのときは過去の功績など関係ない。何かあったら会社に守ってもらえるだろうなどと組織に依存するのは危険な考えだ。

何かあってから動くのでは遅い。自分の身は自分で守らなければ。手に職をつけたい。長く働け、組織に依存せず個人で稼げるスキルを身につけたい。それが最初の理由だった。

②子ども・家族との時間

私は結婚しており子どもがいる。会社員として働いていたとき、子どもはまだ2歳だった。

朝起きて会社に行くとき子どもはまだ寝ており、夜仕事から帰ってくると既に寝ている。

なので土日はその分一緒に遊んだり、子どもとの時間をなるべく取るようにはしていたつもりだ。

ただ平日フルに働いていると、どうしても仕事の疲れが残っていて、100%子どもに向き合えていたかと言えばそうではなかった。なんとなくだらっと過ごしてしまい、今日はいったい何をしてたんだろうと思う日も多かった。

「自分は何のために働いてるんだろう。」

私はもっと子どもや家族との時間を過ごしたかった。

今は休みの日など子どもの方から遊ぼうと寄ってきてくれる。ただ、そんな時期もほんの限られた期間だけだ。大きくなると友達と遊ぶことの方が増えるし、それ自体は成長の過程で健全なことだと思う。

私が言いたいのは、親になって子どもと遊んだり密に過ごせる時間は自分が思っている以上に非常に短いということだ。

家族全員で夕飯だって食べたいし一緒に過ごしたい。今しかない時間をもっと大切に使いたい。後悔をしないように。それが会社を辞めた2つ目の理由だった。

なぜ農業なのか

ではなぜ農業という道に進むことになったのか。

正直な話、始めから農業に興味があった訳ではない。実家が農家でもなければ、特段土いじりが好きという訳でもなかった。むしろ虫は苦手な方である。

会社を辞めようと思ってから、まずは近い業種、そして色々な職種についても調べてみた。ただもともと何か他にやりたい仕事があったわけではなかったので、いまいちどれも自分の中でピンとこなかった。

そして色々と調べる内に、子どもや家族との時間を大切にしたいのであれば、時間をある程度自分でコントロール出来る職種でないと厳しいと感じた。そして会社で働く以上は、どうしてもそのとき置かれている環境に左右されてしまう。なら個人で何か始めるしかないなと思った。


個人でできる、かつ長く働ける仕事、選択肢の一つに農業が思い浮かんだ。


「農業?無理無理!!」

同時に思った。それまで農業というものに全く関心がなかったからだ。

でもネットや本で調べてみると、かなり専門性の高い仕事であることが分かった。

一般的に農業は肉体労働だと思われがちだが、その日の天候や気温を見て種まきや収穫の時期を判断し、作業内容を変更する。自然相手なので予想外のことばかり起こるが、その度にその日一日のスケジュールを組み直す。

仮に種まきが1日ずれただけで、全体の栽培計画や収穫量に大きな支障をきたす場合もあるため、予定には不測の事態も見込んでおかねばならず、かなり頭を使う。

また農業には正解がない。基本的な栽培マニュアル的なものはあるが、その土地の気候や土質、育てる品種、使う資材など条件によって同じように育てても良いものと悪いものができてしまう。

(面白そうだな)

子どもが生まれてから、妻は食の安全にこだわるようになり、自転車で数km先の無農薬ショップに買い物に行ったり、野菜の定期宅配を頼んでいたことから少し農業が身近に感じた。

本屋で何冊か農業に関する本を買って読んだ後、もしやるなら農薬を使わない無農薬栽培がいいと思った。

「畑で作った野菜を残留農薬とか気にせずそのまま子どもがかぶりつけるってなんかいいな」という単純な理由だ。

無農薬栽培は農薬を使えない分、高い栽培技術が求められる。食の安全が求められている中、今後もニーズは高まっていくのではないか。

あとは直接聞かないと分からないと思い、同じように移住して新たに農業を始めた方に連絡を取った。何件かの農家さんと実際に会って話を聞くと、今まで知らなかった農家の苦労や野菜への想い、実際の移住生活などいくつもの興味深い話を聞くことが出来た。

その中で、とある農家の方が継続的に農業研修生を受け入れているという話を聞いた。もうその時点で農業を始めることに心が決まっていた私は早速お願いに行き、研修を受けさせてもらえることになった。

私は会社を辞め、約1年間研修を受けながら野菜作りの勉強をした。

研修先の農家さんには大変お世話になった。手先も不器用で農業の右も左も分からなかった自分に、丁寧に仕事を教えてくれ、今でも分からないことがあれば聞きに行くこともある。改めて感謝したいと思う。

そして、現在の独立に至っている。


ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!かなり長くなってしまいましたが、これは会社を辞めようか悩んでいる、何か新しいことにチャレンジしたい、今の現状を変えたいと考えているあなたに何か少しでも気づきになれることがあればと思って書いています。

また、都会ではなく田舎でスローライフを送りたい。自然環境の中で子育てをしたい。あなたも一度は考えたことがあるかもしれません。でも憧れはするけど実際の生活はどうなの?生計は成り立つの?そこが見えないからやっぱり今のままでいいかと考えている人が多いと思います。

だからこそ、なるべく農業や田舎生活のリアルについて、移住者の目線でありのままに、このブログでは伝えていくつもりです。

私も自分自身が農家になるまで分からなかったことですが、農家の人は色々なこだわりや作り手としての想いを持っています。SNSでそうした想いを発信している農家の方はたくさんいます。是非その想いも知ってもらい、あなたに合う農家を見つけてもらえたらと思います。

あなたにとって私がそういう存在になれたら農家としてこれほど嬉しいことはありません。

岩渕なないろ農園 岩渕貴洋

この記事が気に入ったら
いいね!してね
最新情報を発信しています。
プロフィール
岩渕 貴洋
岩渕なないろ農園とは

33歳で銀行を退職。埼玉から長野に移住し2022年に一から無農薬で年間約50品目の野菜作りに挑戦。栽培の様子や野菜に関するお役立ち情報をブログやインスタで発信中。

働き方
シェアする

  1. 小野博康 より:

    新たな職業にチャレンジする事に敬意を表します。これから様々な事が起きるかも知れませんが家族と一緒に頑張って行ってください。応援させていただきます。

    • 岩渕なないろ農園とは 岩渕なないろ農園とは より:

      小野さん
      はじめまして。温かいコメントありがとうございます。
      そうですね。本当に色々あると思いますが、それも含め楽しみながら仕事ができればと思っています。頑張ります!